「デフレの正体」の話
いやぁ、相棒終わってしまったなぁ。
season14は全体的に話のスケールを大きくしすぎなのと退場キャラが最近では多いseasonだったんじゃないかな。
これはもしかすると次で締めに入るかもしれない。
サザエさん時空でなければ右京さんは来年で60歳、定年よ。
でもまさか米沢さんが退場するとは…
数日前から読んでいた「デフレの正体」、昼過ぎについに読み終えた。
前半のほうは過去の事や細かい数字・グラフが多用されてたせいか読みづらかったけれども、半分すぎると分かりやすい事象や実用的な事に話が進んだから一気に読むことができた。
この本のテーマはサブタイトルの通り「経済は人口の波で動く」だ。
曰く、昨今の経済不調は「景気循環」によるものではなく、「生産(消費)年齢人口」の波の動きによる影響らしい。
本の3章の「国際競争とは無関係に進む内需不振」っていうのは特に象徴的だ。
リーマンショックから昨年の中国経済への不信に始まる円安まで、日本経済の不振が海外で起こったあれこれに起因していると思われがちだが実際は違うらしい。
ざっくりいえば25~65歳の生産年齢人口の波が推移していくことによって「現役世代の減少」と「高齢者の激増」が同時に日本を襲う、ということだ。
特に深刻なのが、国内の生産に消費が追い付いていない点だ。
「最近の若者は車に対する憧れが薄い」ってよく聞く。
この前読んだ「衆愚の時代」にもそんなことが書かれていた。
確かに自分もよっぽどのことがなければマイカーを買うって選択はしないだろう。
だって車そのものの代金に維持費や固定資産税までつくし。
車に限らず、今の若年層はあまり物を購入することに意欲的ではない。
それは単純に「欲を知らない」から、というわけではないらしい。
簡潔に言えば消費欲の旺盛な若年層に金が配分されていないからだ。
じゃあ、だれが金を持っているのか。高齢層だ。
そもそも最近の若者が欲を知らない、ってだけが内需の不振の原因じゃない、らしい。
物質的に満たされているから新たに物を買う必要がない、若い時ほど代謝が活発ではないから食料品も昔ほど買う必要がない。
昨今の内需の不振の状況はまさに年老いて財布のひもが固くなった老人の状況そのものだ。
そしてその分ため込まれた金はどこへ向かうかというと、いざの時のための医療・福祉サービスのための貯蓄となる。
その分のお金は市場に回らないわけだから塩漬け状態と同じなわけで。
それでも全国の高齢者がその貯金を生前に医療・福祉サービスできっちり使い切るならば市場に回る金の量は正常に保たれるわけだけれども、多くの割合でその資産は使われぬまま子世代に引き継がれる。
高齢化社会の日本では親から遺産を相続したところで子も消費意欲のない60代。
当然相続したお金はそのまま子の医療・福祉サービスのための貯金として塩漬けになってしまう。
日本の高齢者の貯蓄額は400兆円ともいわれているのにそのお金が丸々市場に回らないまま塩漬けになっているようじゃそりゃあ経済も立ちいかなくなるわ。
「エンデの遺言」でも言われていたけれども、やっぱり「保有税」って絶対にあったほうがいいね。
それなのにGDP神話を信奉する民間企業は手っ取り早くGDPを上げるために人件費を削るもんだから、消費欲の旺盛な若年層の財布のひもまで締めてしまっている。
書中の言葉を借りるならば「緩慢な自殺」をしているようなものだ。
買ってもらうためにコスト(人件費)を削減して価格を抑えているのに結果としてますます消費行動を抑えているんだから。
景気が回復する→GDPが上がる、ってのは正しくてもその逆は必ずしも正しいってわけじゃないよね。
じゃあどうすればいいのか、その方策も一応紹介されていた。
- 高齢富裕層から若者への所得移転
- 女性の就労と経営参加の増加
- 消費者としての外国人観光客・短期定住者の受け入れ
まぁ、実行できるかどうかは別として。
定年退職した従業者の分をコストカットに回すのではなく若い世代の所得に回し、女性の就労の増加によって団塊の世代の退職を補うとともに女性の消費行動を誘発し、さらに観光事業等によって更なる消費人口を獲得する。
いずれも最終的には「消費の誘発」って一点に帰結する。
昨今、年金問題に話が行きがちだけれどもこれを読んでいるとため込むだけの高齢人口にさらに金を回してどうする、って考えてしまうなぁ。
高齢者が金を必要とするのは究極的には先々の不安からなんだからそこさえ突破できれば「東のエデン」で出ていたような「相続税100%法案」みたいなのを押し通すのも決して不可能じゃないように感じる。
どうせ相続する子世代だって先々の不安が解消されるなら墓まで財産を持っていこうとも思わないだろうし。
プラチナタウン構想とか実現しないかなぁ。